見えているのは真実か?
 労働災害の原因のひとっとして昔から挙げられているものに錯覚がある。錯覚の例としてよく示されるのは,下図のような錯視図形である。
 目の網膜に写るこれらの線の長さは同じであるのに,t感覚としては線の長さが違うように感じる。これは,私達がものを寛るときには,それまでに経験し学習した脳のはたらきで翻訳して感じるためである。
 図1の形は平行な線路が見えたのと同じであるから,狭い方ほど遠くにあると脳は解釈し、そのため,ニ本の平行線は上が遠く,下が近くになければならない。網膜上の線の長さは同じだから,遠くにあるはずの上の線は長いと感じる。
 図2の形は建物の隅や角に現れる形であり、左側は突出した角に現れ,右側は奥まった隅に現れる。そこで,網膜上での長さが同じであると,右側の図形はとおく,左側は近くにあると脳は経験上学習しているため右が長く,左は短いと感じる。
 それでは,なぜ遠近感が感じられないのかというと、この図が平面の上に単独で(景色としてではなく)書かれているために、平面であるという情報が強く脳に影響しているためであるとされている。
 読者の中には,そう言われてみると,奥行きが感じられるなという方もいると思うが,それはこの文章を読んで新しいことを学習された影響が大きく作用している。
 この様に,感覚はそれまでのその人の経験や学習(遺伝によって祖先から受け継がれた
もの含めて)によって受け止め方が共通になり,また、異なるのである