産業安全パラダイム研究所とは
 
 産業安全パラダイム研究所の名称はいろいろな意味を含んでいる。

まず、「産業安全」であるが、現在は、労働安全衛生法で定められている労働安全コンサルタントの名称がそうであるように、労働者の安全を中心とする安全を「労働安全」と称することが多い、

 歴史的には、明治44年に公布された工場法が、我が国の事業場での安全法制の創始であることはご承知の通りであり、大正4年に農商務省に工場監督課が設置され、工場監督官が置かれた。まず「産業安全」から始まったのである。

 大正11年には、内務省社会局が設置され工場監督は社会局に移管されたが、鉱山の保安に関する事項は、農商務省に残された。
 民間では大正14年に産業福利協会が設立され、雑誌「産業福利」が発行された。
 その後、幾多の変遷をへて、戦後、産業安全の主たる規制は労働基準法に移されたが、鉱山保安法はそのまま通産省に残り、交通安全、消防、火薬類の製造、原子炉の安全、コンビナートの安全、環境等については、主として一般公衆等の安全を規制する法制がそれぞれ法制化され、所管省も別れていった。

 しかし、労働安全衛生法になっても労働者の安全に関しては、これらの諸法規と相まって、厚生労働省に責任がある点に変わりはない。この精神を継承して「産業安全」としたのである。

 次に「パラダイム」であるが、辞書では、哲学などの基礎となる規範などと翻訳されているが、英語の用例を調べるともっと意味が深い。

 西遊記の物語で孫悟空が飛び舞わっていた世界が、実はお釈迦様の手のひらのなかであったという落ちがあるが、このお釈迦様の手のひらにあたるのがパラダイムであると言うとわかりやすいのではないかと今では思っている。

 このようなパラダイムは、安全については、労働者を対象とする労働安全であっても、鉱山保安でも、交通安全でも、公衆安全でも、環境の保全でも同じであると思う。

 このように、述べると安全のパラダイムの研究とは何かと言うことになるが、お釈迦様の手全体を研究するなどと言う大それたことは出来ないので、せいぜい孫悟空が飛び出さないようになっている指とか、手のひらの皺とかにあたるものを、科学的手法で調べることになる。

 私は、まず、ハインリッヒの法則の中の1:29:300の法則を実証することから始め、これが、現実の労働災害の発生状況でで証明できた(論文・エッセイの項を見て頂きたい。)ので、建築学会の特別誌で発表した。

 また、ハワイ大学の渡辺名誉教授が発表された数学の定理(醜いアヒルの子の定理)によると、科学の分析では分析の目的が大切で、あまり細かく分析すると分別できなくなるということであるので、(詳細は、論文・エッセイの項)災害分析(特にリスクアセスメントの項目としての)でどのような分類が災害防止対策を考える上で適切であるのか等の研究を行っている。

 必要とされる災害発生状況の分類項目が現行では大きすぎるのでなかなか難しいが、とりあえず、リスクアセスメントを行う際に参考として頂きたいデーターを発表していきたいと考えている。

 さらに、私の最近の考えでは、経営者、管理監督者、設計者それに労働者の安全意識が、災害防止上最も大切なように思えるので、安全意識とは何かを考えてみたい。
 昔から、安全意識の昂揚という項目が安全対策の随所に出てくるが、安全意識の構造についてはあまり研究されていないように思う。

 最近の脳科学の進展は、目を見張るものがあるがまだ、安全意識に直結しそうな研究は見出せない。私なりに考えると、安全意識は、知識や技能のレベルと、意欲や興味のレベルとから成るように思う。

 前者は、主として教育や訓練で得られるが、後者はどのようにしたらよいのであろうか、納得とか得心とか言う言葉が後者と関係が深いようである。

 今後の研究課題であるし、心理学者や産業医特に労働衛生コンサルタントの先生方のお力を拝借する必要もあるのではないかと思う。
 現在は、当研究所では研究と情報発信を中心に業務を行っているが、発表した論文、データ(主として厚生労働省の統計を加工したもの)などは、引用、活用はご自由である。
 活用例などをメールして頂ければ、さらにうれしい。
 ご質問、ご意見もお寄せ頂きたい。

 研究所は、房総半島にあるので、房総半島の文化財(特に石造の道標)も房総石造文化財研究会の一員として、GPSやGooglemap等と、デジカメを活用して、研究?し、情報発信している。房総半島の自然環境の写真も同様である。房総半島からのダイアモンド富士の写真は貴重な一枚になると思う。  さらに、加来(賀来)氏のルーツについての情報も発信している。